パールイデアのクリエイティブに欠かせないクリエイターを紹介するインタビュー企画「クリエイティブの美学」。今回は、パールイデアで “フィニッシャー” そして“3Dモデラー” として二刀流の活躍をする 日高 浩太(ひだか こうた) を紹介します。

マネキンメイクや塗装だけに留まらず、デジファブ技術を駆使した3D造形の制作に至るまで、立体造形における彩色のスペシャリストである日高のクリエイティブの美学とは?

▲日高 浩太 / パールイデア 商品部リメイク課のフィニッシャー 兼 造形ラボの3Dモデラーとして幅広く活躍中。

学生時代は油画を勉強していました。2006年にパールイデアに入社し、現在も在席している商品部リメイク課に配属されます。“マネキンメイク師”という仕事を初めて耳にした時は「そんな職業があるのか!」と驚きましたが、実際にやってみると難しく…思った通りに線が引けないもどかしさを感じる日々。先輩から教わりながらマネキンメイクやエイジング塗装などの業務を中心に行っていましたが、時流的にリアルマネキンの需要が減少した事によりメイクの仕事も少なくなってしまいました。それでも年に数回、百貨店様のショーウィンドーで使用するマネキンなどにフルメイクを施す仕事があるので、ここぞとばかりに毎回十二分に気合を入れてメイクをしてます!本心としては…メイクの時代がまた来てほしいものです。

そんななか、社内に“造形ラボ”と云う部署が設立されました。それに伴い私は3D造形を独学で一から勉強し、現在はリメイク課の仕事と兼務で3D立体造形物の制作やフィニッシュワークも行っています。はじめは右も左もわからない事だらけでしたが、他部署の先輩が様々な実験的なプロジェクトへのアサインを数多く依頼してくれ、一緒に試行錯誤しながら造り上げる機会が多くあったお陰で、かなりの経験値を得られたと思います。

此方はデザイナーのイメージイラストを元に、頭部はマネキン原型師が粘土造形した後3Dスキャンしデータ化して、3Dモデリング制作した体とドッキングするという手法で作ったフィギュアです。まさにデジタルとアナログの複合技です。

パールイデアのシンボルマークも、デザイナーのイメージを基に3Dモデリングで作成しました。

 

岐阜県瑞穂市マスコットの「かきりん」と中日ドラゴンズ球団マスコットの「ドアラ」がコラボした「ふるさと納税返礼品」のフィギュア製作も行いました。造形も塗装も心から楽しんで仕事が出来た案件です。

 


色にこだわり彩を与える

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

納期までの時間内で、出来る限り最大限クオリティの高い物に仕上げようとする気持ちです。

 

どんなところにやりがいを感じていますか?

お客様のSNS等で、自身が仕上げたものを紹介頂いているのを見ると、嬉しくやりがいを感じます。某百貨店様のショーウィンドーで使用するマネキンへのメイクは、毎回お客様の強いこだわりを100%以上の仕上がりで実現するために試行錯誤する事もありますが、その分嬉しさも大きいです!

 

これまでで一番大変だった仕事は?

一番というと難しいですが…某アウトドアメーカー様の靴を3D立体造形で制作した際は彩色と質感に悩みました。出来るだけリアルに仕上げたいというご要望で、布やゴムなど質感が違う素材を色で再現する必要がありました。試しに下地の色の上に布を敷き、その上から塗装してみたところ良い具合になったので、手芸屋を何件もハシゴして本物の質感に一番近い生地を探しまわりました。

また、3D造形物の彩色はバリエーション様々です。用途や設置場所によって素材も塗料も変わってくるので、毎回悩みながら進めています。屋外立体看板を制作した際は、サイズが大きくて塗装ブースに入りきらず、屋外で塗装作業をしました。耐候性が重要なので使う塗料にも細心の注意をはらっています。

 

休日の過ごし方は?

息子とPokémon GOをしながら出掛けたり、一緒に料理を作ったり。食べ盛りなので量を重視してます。

 

今のご自身を形成する上でもっとも影響を受けたものは何ですか?

中学生の時に授業でアンドリュー・ワイエスの模写をしたんです。当時は漫画の模写などに情熱を注いでいたので、油絵具なんて使った事もありませんでした。技法も何もあったもんじゃない、そんな初めて描いた絵画のような物を褒めて貰えた事がキッカケで、今も似たような事を続けているんじゃないかと思います。

アンドリュー・ワイエスは、20世紀のアメリカの画家。
アメリカン・リアリズム の代表的画家であり、戦前から戦後にかけてのアメリカ東部 の田舎に生きる人々を、鉛筆、水彩、テンペラ、ドライブラシなどで詩情豊かに描く。また、作品中には体に障害を持つ女性や、黒人の中高年男性を描くなど、弱者に対する優しい目線も感じられる。少年時代には人種差別が激しく、黒人街には白人が誰も近づかないような時代背景が存在した。だが、ワイエスは人種差別をせず、黒人少年とも遊び、その様子はフィルムにおさめられ、現在も確認することができる。彼の確かなデッサン力とテクニックは、20世紀美術の写実表現の系譜に大きな位置を占めている。アメリカの国民的画家の1人といえる。ワイエスは、アメリカ人に「アメリカとは何か」を示したかったと語っていた。父は挿絵画家、ニューウェル・コンヴァース・ ワイエス。

 

この仕事をするにあたって、向き・不向きはありますか?

まずは「色」に興味が無いと…ちょっと難しいかな、と思います。先輩曰く「色を “分析” し “操る” 」事がこの仕事において大切にしている事だそうです。どの色をどれぐらいの量にしたらイメージ通りになるかを分析して、色を調合したり重ねたりしていくので、「色を見て感じ取れる力」と「素材や材料の知識」を身に付ける必要があります。これによって仕上がりやスピードに大きく差が出てしまうのです。

 

今後どんな事に挑戦したいですか?

目まぐるしく人々の興味が移り変わってビジュアルの重要性が特に高くなっているので、私がつくる彩りが誰かの印象・記憶につよく残るような仕事がしたいです。あとは有名キャラクターの造形~塗装までの全てをやってみたいですね。

 

あなたにとっての「クリエイティブの美学」とは?

アート作品を作っているわけでは無いので、仕事として限られた条件の中だとしても、お客様の想いをリアルに実現した最高のものづくりがしたいです!