2020年がスタートしました!今年はどのような年になるのでしょうか?

東京オリンピック開催の年としてメモリアルイヤーになることは間違いないですが、私たちの空間デザインの業界においても大きな変化の年となりそうです。pearly daysにて取り上げてきた2019年注目キーワードをピックアップしながら、2020年の動向を予測します。


デジタルはインフラ化し当たり前になる。これからはリアルの時代!

2019年の記事で大変反響をいただいたのは、NY視察レポート「店舗=売り場はもう古い? リテールテイメントがキーワード NYの最旬体験型店舗4選」でした。まさかこんなにも多くの方に読んでいただけるとは思ってもいなかったのですが、やはりこれからのリアル店舗にとって重要なのは”体験”であり、小売とエンタメを組み合わせた“リテールテイメント”という考え方が関心を集めているのだと実感しています。

次世代型店舗について、私たちも常日頃から研究を重ねているところですが、未来のリアル店舗を考える上でもデジタルテクノロジーを無視することはできません。現在は、あらゆる産業がテクノロジーによってその姿を変えていく、デジタルトランスフォーメーションの時代です。

上の図のように、リテールテック、フィンテック、ファッションテック・・・。すべての分野においてデジタルによるイノベーションが起こり、既存のビジネスモデルさえも全く別のものに置き換えられてしまう。そんな激変の時代において、店舗をはじめとした”空間”というリアルな場はどのような意味をもつのでしょうか?

ますます変化を続けるデジタルな社会の中でも、私たちは”リアル”の可能性を信じ続けます。あらゆる産業を横断するリアルな空間の価値は、私たち人間がアナログである以上、存在し続けると考えます。

5G、AIなど2020年以降も進化し続けていくデジタル技術はもはや社会のインフラです。そのインフラを最大限に活用することは、当然取り組んでいかねばなりません。でなければ、私たちは時代に取り残されてしまいます。

一方で空間という場所は、もっとデジタルと融和したリアル空間(ハーモナイズとも呼ばれています)、よりアナログに近いデジタル、フィジタル(フィジカルなデジタル)、そしてユーザーの”体験”の場として、重要な意味をもっていくのではないでしょうか。

リアルだからこその価値を考え、リアルの価値を再構築していく。そんな2020年となりそうです。

“リアルのデータ化”に秘められた、大きな可能性

リアルの可能性を高めるもう1つの視点として、リアルな空間で”データを取る”という昨今の動きも注目すべき点です。ECが長けていたデータによる顧客分析やレコメンド機能など、これらの技術をリアル店舗でも取得できるようにすることで、ますますブランドは1顧客に対して、適切なサービスを提供することができます。私たちも顧客分析カメラを活用しながら、実際にデータにもとづくVMDの研究を進めています。

昨年12月に新設したショールーム”ACTIVE STORE(アクティブストア)”には、顧客分析カメラを搭載したマネキンを展示しています。こちらについてはまた詳しくご紹介していきます。

ACTIVE STOREは、最新の店舗向けデジタルツールを取り揃えながらも、単なるデジタル技術を導入した仮想店舗ではありません。次世代型店舗とはどのような空間なのか、すべては実際に利用するお客様がいかに空間でより良い体験ができるかを中心とし、オムニチャネルな時代における、リアル店舗のあり方を研究し、提案し続ける拠点として活躍していきます。ぜひご来場いただき、実際に体験を頂きたいと思います。

企業のブランディングとしてのオフィス空間。 そして、テクノロジーの活用も活発化!

リテールテイメントの記事同様、2019年にpearly daysにて多くの方に読んでいただいた、バイオフィリックデザインの記事(空間デザインの新手法!バイオフィリックデザインがもたらす驚きの変化)。特にオフィスデザインにおいて昨年は大変注目された年でした。

おしゃれなオフィスで働くことは今となっては当たり前になっており、いかに差別化された世界観を働く環境で表現できるかが重要な時代です。私たちが携わっている店舗デザインにおいて、ブランド表現が肝であるように、オフィスにおいても企業としてのブランディングが今後ますます必要とされてくると考えます。

また、さらに考えなければならないのは、おしゃれなオフィスはいいけれど、本当にそれは従業員が働きやすい環境であるかということです。フリーアドレスに変えたが、結局席は固定という話はよく聞きます。ワークスタイルを変え、生産性を上げるという本来の目的には効果がないのでは、やる意味がありません。

そのための手法として、自然の環境を再現するバイオフィリックデザインによって創造性や生産性をアップさせる手法はこれからも有効です。また、少し前に集中力計測ができるアイウェアを活用したオフィスが話題となったように、今ではテクノロジーを用いてデータにもとづいた生産性アップをテストしている企業もあります。従業員がどのようにオフィス内で行動し、どれだけ集中できているのか、生産性は高いのか。そういったことがデータ化される時代も近いのかもしれません。

店舗においても同じことが言えますが、世界観を表現するデザイン的な要素を大切としながらも、データによるオフィスデザインも一つの方向性として考えていくべきかもしれません。オフィスも、デジタルとリアルの融合がこれからますます進んでいきます。

サスティナビリティのその先は? すべての企業が考えるべき地球環境問題

pearly daysでも何度も出てきたワードである、”サスティナビリティ”。日本だけでなく世界中のあらゆる媒体で声高に叫ばれている言葉です。昨年訪れたNYでも感じたように、サスティナビリティはただのトレンドではない、世界の大きな潮流だと考えます。

SDGs、つまり、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットで構成される2030年までの国際目標。各項目を見るとそれぞれ壮大な目標が掲げられていて、その目標もかなり具体的に達成年度と成果が書き記されています。

持続可能な社会とはどんな社会なのでしょうか? 日本に住んでいると全く実感がわきませんが、例えばそれは、電気がついて、水が使えて、食べ物を食べることができて、暖かい家で眠ることができる。そんな普通の生活を送ることをすべての人が実現すること、なのかもしれません。環境の問題だけでなく、経済的、社会的な問題含めて世界が一つとなって進めていこうというものです。

その中でも環境問題は、今後も真剣に企業が取り組んでいかねばならない時代です。多くの企業が、経営方針にサスティナビリティについての施策を盛り込み、数年後、数十年後の未来の目標を掲げています。プラスチックゴミ袋を完全になくす、バイオ素材のペットボトルを使用する。今では、SDGsに関わる経営施策に取り組んでいる企業ほど、社会からの評判も良く、財務体質も良いというデータも出ているそうです。

また、今ではリジェネレイティブ=”再生可能”という考え方が注目されています。サスティナブルでは間に合わない、自然を蘇らせていく活動が大切だということです。いち早くその考え方を打ち出したイギリス発コスメブランドLUSHは、創業以来原料や手作りへのこだわりを守りつづけ、地球環境に配慮したビジネスを行っています。

企業によって様々な考え方がありますが、どんな方向性であろうとも、これからの何十年において、私たちは企業活動と社会的活動を両立させ、問題解決していかねばなりません。


今回は、昨年pearly daysにて注目されたキーワードをもとに、2020年の動向を考えてみました。デジタル、グローバル、2つの大きな潮流が、これからの世界を大きく変えていきます。私たちはその流れに乗り遅れることなく、しかしその一方で”リアル”の可能性を信じ続け、空間創造にチャレンジしていきます。

今年も弊社オウンドメディアによる情報発信を積極的に行ってまいります。皆様の2020年がpearly days(= ときめきの日々)となるように、私たちの考え方や発想がその一助となれば幸いです。

本年度もよろしくお願いいたします。