現在、空間デザインにおいて注目の手法である”バイオフィリックデザイン”。 バイオフィリックデザインとは、建築やインテリアの中で自然を感じられる環境にすることで、私たち人間の自然とつながりたいという本能に訴えかけ、癒しや心地よさを与えてくれる空間デザインの手法のことです。
最近では多くの商業施設やオフィス、カフェなどで見かけるグリーンを活用した空間デザインですが、そのデザインや表現方法も様々。本物のグリーンを使用するところもあれば、すべてフェイクグリーンで演出をする空間もあります。また、部分的なグリーンの活用により癒しの空間を作り上げている場合もあれば、グリーンを全面的に打ち出して本当に自然の中にいるかのような空間を演出しているところもあります。
空間においてどれくらいのグリーンが適正なのかは様々な議論がありますが、前回記事でご紹介したように、人が適度に集中できリラックスできる適切なグリーンの量は、10~15%程度だと言われています。ただ実際は、人ぞれぞれの好みもあり、多用するシーンも増えています。
今回は、バイオフィリックデザインを活用した国内外の様々な事例をグリーン活用方法別にご紹介します。
グリーンによる自然環境を全面に押し出す空間事例
オフィスを緑化することで、従業員の生産性を上げようという取り組みを進める米大手Amazon。シアトルにある3つの巨大ドームは圧巻で、ワークスペースとは思えない外観。中には、世界中から集められた4万本以上の植物に囲まれ、ジャングルや森にいるかのような空間「The Sheres(スフィア) 」 。
参考:AMP「Amazon流、働き方改革「バイオフィリア」という新しい取り組み〜オフィスの緑化と生産性の関係」 (2018年7月13日)
店舗の緑化に精力的に取り組んでいるApple。サンフランシスコ・ユニオンスクエア・ストアでは、店舗内に本物の木を配置。また太陽光を取り入れる大型のガラス窓を採用し、屋内ながら自然を体験できる空間となっています。2017年にシカゴに登場したストア、東南アジア初となるシンガポールのストア、2018年マカオに登場したストアでも木を配置した自然を体感できる空間です。
参考:AMP「アップルが店舗を緑化する理由–ストレス低減し購買促す「バイオフィリック・デザイン」 (2019年1月1日)
弊社パールイデアの本社オフィスリニューアル事例。バイオフィリックデザインを前面に押し出した空間。本物の植物とフェイクグリーンを混ぜてうまく使うことで、まるで自然の中にいるかのようなオフィス空間になっています。
リアルグリーンをメインに活用した空間事例
「自然との共生」をコンセプトにデザインされた、ヤンマー本社ビル。2017年にアメリカで開催されたバイオフィリックデザインアワードで奨励賞を受賞。最上階にあるガラス張りの都市養蜂や、中央の螺旋階段を活用した自然換気システム、水の流れるエントランスなどが評価されました。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社が初めて店舗にバイオフィリックデザインを取り入れた、表参道ヒルズ店。本物の植物や花を用いて、より本物の癒し空間を演出。地域の人々のサードプレイスをつくり続ける、スターバックスの新たな試みです。
フェイクグリーンを部分的に取り入れた空間事例
パールイデアが手掛けた休憩室&食堂の事例。癒しや生産性向上を目指し、バイオフィリックデザインの要素を取り入れたワークスペースを実現。ミーティングや打ち合わせにも活用でき、社員の働き方やモチベーションが変化しただけでなく、採用などリクルートにも効果を感じていただけています。
パールイデア本社カフェテリアのリニューアル事例。中央に大きなフェイクツリー”ima tree”をディスプレイし、公園でみんなでピクニックしているような、癒し空間を演出しています。
ここ数年でとても注目を集める、バイオフィリックデザインの事例をオフィスデザイン中心にご紹介しました。空間によって様々な活用方法のあるグリーンの演出。バイオフィリックデザインは、サスティナブルの考え方や、都市型オフィスにおける需要など時代性もあいまって、今後もますます注目の空間デザイン手法です。
グリーン演出といってもとても幅広いもの。ぜひ事例を参考いただきながら、お気に入りのイメージをつくりあげてみてください。
スペースデザイナー。空間設計におけるディレクションを担当し、オフィスチームのリーダーをしています。趣味はゴルフ。