ニューヨークと並んで、世界的な小売マーケットとして盛り上がりを見せる中国上海。中国では、アリババ創業者のジャック・マー氏により提唱されたニューリテール構想により、デジタルとリアルの融合店舗への投資が加速しています。

今回は、日本のデジタル化の一歩も二歩も先を行く中国市場において、上海で盛り上がりをみせるニューリテールの現状をレポートします。


ニューリテール構想とは?

ニューリテール(新小売)とは、2016年にアリババ創業者のジャック・マー氏により表明され、アリババの中核戦略ともなっている小売の未来像を表した言葉です。

基本的には前回の記事で紹介した【OMO】と同じ意味で、デジタルとリアル、オンラインとオフラインの融合した新しい小売プラットフォームのこと。テクノロジーとデータを駆使して、新たな消費者体験を生み出す小売手法です。

Alibaba JAPAN

https://www.alibaba.co.jp/service/newretail/

ニューリテールの代名詞的存在 盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)

ニューリテールの代表例としてよく取り上げられる”盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)”。 中国ネット大手のアリババが運営する生鮮食品スーパーで、オンラインとオフラインを組み合わせたOMO体験をいち早く実践。アプリでの決済やネット販売はもちろんですが、リアル店舗には、リテールテイメント的な楽しいショッピング要素を盛り込んだ仕掛けが注目の店舗です。

肉、野菜、果物など品揃えは豊富で、惣菜や軽食なども充実しています。
新鮮な魚介を自分で網で採って購入することもできるし、その場で調理してもらうことが可能。ある種リテールテイメントな空間。
併設のレストランでは、ロボットが料理を運んできてくれます。受付と調理場以外に店員さんはほとんどおらず、決済などもすべてアプリからという徹底ぶり。まだ試験的な店舗のようですが、今後はいかに!?
決済はすべて専用アプリから。中国国民でないと使用ができませんので、視察の場合はアテンド必須です。
ネット販売も便利で、フーマーのオンラインショップでの注文分を、店内で店員さんがピッキング。専用ケースにいれて、頭上のレーンで配送センターまで運ばれていきます。

テンセントが一部出資している永揮超市(ヨンフイ)の「超級物種(チャオジーウージョン)」

アリババの盒馬(フーマー)に対抗してネット大手のテンセント陣営が立ち上げた生鮮食品スーパー”超級物種”。フーマーほどまだ浸透してはいないものの、ニューリテール分野では、アリババvsテンセントで語られることが多く、両社の取り組みが注目されています。

品揃えは高級とまではいかないものの、お値段そこそこの品質の良いものを取り扱っている。店内も清潔感あり、買い物しやすい
イートインスペースやフードコードも併設。
ほとんど全ての商品のプライスタグにはQRコードが付いていて、ネット販売サイトにつながっています。オンライン注文や、商品情報など見ることが可能
決済も専用アプリにて、当然キャッシュレス。

Amazon goだけじゃない!中国の無人コンビニ戦線

Amazon goで有名な無人コンビニ。日本もコンビニ各社が開発を急いでいますが、中国はやはりスピード感が違いました。おそらく試験段階でもどんどん出店したり、スタートアップ企業が乗り出している印象です。自分でスキャンして購入する善意に任せたような無人コンビニも中にはありましたが、AI認証カメラを活用した店舗が次々と現れ始めています。今回は上海の”Yes go 小野售”を取り上げます。

“Yes go 小野售” という、ホテル内にある無人コンビニ。有人のカフェの中の1スペースがコンビニになっており、コンビニ内には人はいません。
店内は無人で、ゲートがあるのみの店構え。
専用アプリにてQRコードを表示して入場。
飲み物やスナック中心の品揃え。
ペットボトルを手に取ります。あとは何もせず外にでるだけ。

詳細なシステムはわかりませんが、顔識別カメラによる認識システムが活用されているそうです。amazon goのように店内中にカメラが張り巡らされているわけではないので、最初は気付きませんでした。

今回は主にスーパーやコンビニなど食品や日用品中心のお店を取り上げました。それだけ中国の人々の日常が大きく変わり始めており、リアルやデジタルという意識がなくなってきているのだと思います。

2016年のジャック・マー氏によるニューリテール宣言から2年。まだまだ進化を続ける中国小売業界の今後が楽しみです。