全4回に渡ってお送りしている、NYレポート。最終回となる第4回はアメリカの消費の変化を探りながら、これからのリアル店舗には何が求められているのかを考えます。
目 次
- “買い物”しなくなったんじゃなくて、“つまらない買い物”はしなくなった
- NY消費のキーワードは「ラグカジュ」と「サスティナブル」
- リアル店舗はエクスペリエンス(体験)がすべて
- 「体験デザイン」がこれからのリアル店舗の鍵を握る
“買い物”しなくなったんじゃなくて、“つまらない買い物”はしなくなった
一時期話題になったアメリカのゴーストモールに象徴されるように、アマゾンなどネット販売の拡大によって、既存の小売店舗が窮地に立たされているというニュースをよく聞きます。アメリカのショッピングモールや百貨店は本当に活気がないのか?消費者は本当に買い物をしなくなってしまったのでしょうか?
ふと立ち寄ったマンハッタンモールという駅直結の商業施設は、ゴーストモールとまでは言いませんが、2階部分がほとんど空のテナントでした。NY市内の一等地であり、外にたくさん人がいるにも関わらず、都会の喧騒とは全くと言っていいほどかけ離れたその静けさに、驚きを隠せません。
やはり人は買い物をしなくなってしまったのか…そんな一抹の不安を抱えながら、世界一のショッピング街である五番街に行ってみました。
先ほどのモールの雰囲気とは打って変わり、多くの人で賑う光景。街を飾るショーウィンドーには、通り行く人々が足を止めカメラを向けるなど、熱い視線が注がれていたように感じます。
高級なイメージのある五番街ですが、当然のようにファストファッションの店舗も数多く出店していて、旅行客を中心に盛況でした。
有名な百貨店を訪れてみると、店内にも観光客らしき人をたくさん見かけましたが、彼らが実際に買い物をしているようには見受けられませんでした。今回、実際に某現地百貨店のVMD担当の方とお話しする機会があり、買い物事情を尋ねてみると、ほとんど常連客が買い物を楽しんでいて、たまに旅行客の爆買いがあるのだそうです。
実際百貨店内の売り場を見ても、活気のある売り場というよりは、他の店舗とは一線を画した落ち着きを感じました。VMDやほかの店舗との差別化の意識が並々ならぬものであり、信念のような、普通の店舗には真似できない個性があります。
また、“モノを買う場”として上手く存在感を維持している店舗もありました。例えば、有名な総合スーパーであるTARGET(ターゲット)は、アイコニックなロゴとレッドカラーが客を引き付け、豊富な品揃えの日用品を手頃な値段で購入できることから、依然として人気を博しています。
ネットへの積極的な取り組みも行っており、配送システムも充実しているなど、オムニチャネルな戦略も顧客から支持されている理由なのかもしれません。
NYの中心街に実際行ってみて、決して活気がないという印象は受けませんでしたが、単なる“ものを買う”行為はネットに置き換えられている状況は否めません。
さて、ここまではいわゆるニューヨークの有名なショッピング街を中心にご紹介してきました。最初に訪れた空きテナントばかりのモールには驚き、活気がないというニュースは本当なのだと思いました。
しかし、五番街やTARGETの事例からわかるように、買い物という行為が起こっている場所は今も確かに存在している。それはつまり、“モノを買う”行為はネットに置き換えられている今、人々は独自性のない単なる売り場での”つまらない買い物”はしなくなったのだと思います。
消費スタイルが変化しているアメリカで、人々は今何を求めているのでしょうか?次は、NYの消費の今に迫りたいと思います。
海外トレンドリサーチャー。またデジタルメディアマネージャーとして、pearly daysの運営などWEB事業を担当。好きな言葉は、“ Life is a journey ”。