全4回に渡ってお送りしている、ニューヨークレポート。第2回目となる今回は、デジタルテクノロジーがリアル店舗でどのように活用され、顧客体験を向上させているのかを、実例をもとに見ていきます。
AmazonやNikeなどのアメリカを代表するブランドのほか、新進気鋭のスタートアップまで幅広くご紹介!
やっぱりすごかった!レジ無しコンビニ 【amazon go】
アメリカシアトルに本拠を構えるECサイトのビッグカンパニーAmazon。そこが展開するリアル店舗がシアトル、カリフォルニアに続きニューヨークにもオープンしました。
取り扱いアイテムは「コンビニで扱っている食品系」といったところ。ここのサービスをすごくシンプルに説明すると、「消費者がスマホを店頭のゲートにピッとかざすと店内に入れ、商品を手に取れば仮決済(ネット購入でいう買い物カゴへ投入)となり、お店を出ると手に持った商品は正式な購入(=本決済)となるといったしくみで買い物ができます。
amazon go 専用アプリをダウンロードしクレジット情報を事前に登録さえしておけば、消費者にとって買い物をするときの「レジ待ちストレス」は皆無です。
キャッシュレス&ノーレジスタイルの便利さや、(お店にとって)レジ要員削減メリットだけでなく、ビッグデータを駆使した人気食品のチョイスとアレンジが秀逸で、サンドイッチなどデリ商品のハイクオリティさも試す価値ありです!
【amazon go – Brookfield Place New York 】
Level 2, 200 Vesey St Winter Garden, New York, NY 10281
NIKEが仕掛けるデジタルコネクトストア 【Nike House of Innovation 000】
アスリートからファッションピープル、または普通の人といった世界中から支持を集めるNIKE。ニューヨーク5番街にあるそのフラッグシップストア【Nike House of Innovation 000】に行ってきました。
B1〜5Fまでと6フロアにて構成されており、空間を贅沢に使ったディスプレイやリアルスポーツ(陸上・バスケ・サッカー・スケボーなど)を表現した躍動感あるアスリートマネキン、やや太めなリアル体型のウィメンズマネキン。異素材を多様に組み合わせたテーブル・陳列棚・ステージなど様々な仕掛けを施した環境や什器は、VMDに携わる者でなくてもワクワクドキドキを抑えられないはず!
ブランドイメージや商品説明を目的としたデジタルサイネージに加え、バーコード読み取り機能を駆使したオンライン購買訴求により、店内でアプリを使用してバリエーションや在庫確認、即時購入ができます。 また、オンラインで購入した商品をいつでも受け取りできる無人ロッカーが備わっていました。
オンラインとオフラインを問わない、これらの便利なサービスが、顧客との関係をより強固なものにし、NIKEのブランド価値を高めています。 デジタルとリアルのシームレスな体験が、これからの店舗において重要なファクターであることを示唆していました。
【Nike House of Innovation 000】
650 Fifth Avenue New York, NY 10019
ニューヨーク女子の定番スタイル!? 洋服レンタルの 【Rent the Runway】
高騰する住宅費、限られたクローゼットスペース、パーティー機会、最新の高級ファッションを身にまといたい…そんなニューヨーク女子たちの事情とニーズにマッチしたレディスアパレルのレンタルサービスを展開するのが Rent the Runway。
オンラインにて始まった同社の会員は全米で数百万人にも上り、パーティードレスなど一時的に着用するアイテムのみならず普段着として使えるカジュアルウェアも借りられ、レンタル期間は4~8日間でクリーニング無しで返却することができます。 セレクトショップのように多数のブランドアイテムを取り揃えており、シーズンの新作を随時入荷し、シーズンを終えたレンタル済み商品は中古品として販売もされています。
このサービスをリアル店舗で提供することの魅力はまさに「実際に着て試せること」に尽きると思います。実店舗内では、試着をしてその場でレンタルすることが可能です。
ただし、レンタル予約と決済はネット上の自分のアカウントで行うので、店内には複数のタッチパネルが並び、スマホを見ながら洋服を選ぶ女子たちで賑わっていました。
【Rent the Runway】
30 W 15th St, New York, NY 10011
人気のDtoCブランドは、一貫したメッセージ性とネット活用が優れている 【Warby Parker】
“オンラインのみで展開する”アイウェアブランドの Warby Parker。 「とある学生が飛行機を下りるときメガネをなくした。到着した空港で新しいメガネを買おうと思ったらすごく高くて買えなかった。あくる日このことを友人に話したら”それならば、俺たちでメガネ屋をやろうぜ”と話が盛り上がり仲間たちとメガネ屋を始めた。」こんな経緯(いきさつ)で始まった、いま最も熱いブランドの一つです 。
ロックフェラーセンターにあるショールーミング店舗は、この場での購入が出来ないのにも関わらず、試着を楽しみスタッフからカウンセリングを受ける幅広い世代で溢れていました。
良い製品を良い価格で提供したいというポリシーから商品のプライスレンジは $95 , $145 , $195 の3パターン、中間業者を除くこと(DtoC=Direct to Consumer)でよりコスパを充実。
また、同社が運用するお試しサービス「Home Try-on」を利⽤すればメガネを5本選べ、⾃宅で無料の試着が可能となり、利⽤者は装着した⾃分のセルフィーをハッシュタグ#warbyhometryonをつけてSNSに投稿すると、どのメガネが似合っているのかブランドからのコメントが届きます。結果としてそれが利⽤者のSNS拡散を後押しするようです。
加えて、「見る権利は皆にある」と称し、売上から得られた利益の一部を慈善団体を通し発展途上国のメガネ市場育成のために寄付しているそうです。そんな企業姿勢も高く支持されているのだと思います。
【Warby Parker – Rockefeller Center】
1258 6th Ave, New York, NY 10020
革新性や目をひくために取り入れるのではなく、心を掴む顧客体験を生み出せるかがカギ
リアル店舗での買い物における消費者のメリットは、「実物を見て、触って、試すことができ、専門家からアドバイスを受けられる」ことです。能動的に情報収集をさせるオンライン購買行動に対し、リアル店舗ではそこに行くだけでより詳しい商品の情報を収集することができ、結果として商品に対する信頼性がより高くなるのです。
オンラインの利便性とオフラインの信頼性、この二つを融合させるテクノロジーの活用とともに、ここでしかできない「体験」を消費者に提供すること。これこそがリアル店舗に課された使命ではないでしょうか?
グローバル展開するクライアントのセールス担当兼クリエイティブディレクター。そして、社内で一番の”田舎者”。今年のテーマは”質と量”。一番のモテ期は”保育園時代”。。