ニューヨークと並んで、世界的な小売マーケットとして盛り上がりを見せる中国上海。

オムニチャネルやO2O(Online to Offline)の次の戦略として、デジタルとリアルを融合したOMO(Online Merges with Offline) が叫ばれている昨今。 中国では特にユニコーン企業と呼ばれる新興企業を中心に、OMO店舗開発の進化がとまりません。

今回は、日本を先行して成長を続ける、上海で話題のOMO店舗をいくつかご紹介します。


OMO(Online Merges with Offline)とは?

OMOとは2017年頃、元Google中国のCEO 李開復(リ カイフ)が提唱し始めた言葉で、デジタルとリアルが融合した社会のことです。オンライン上からオフラインへと行動を促すO2Oをさらに進化させ、オンラインとオフラインの境のない環境をOMOと呼んでいます。例えば、シェアリング自転車やタクシー配車など、リアルであってもオンラインとは常時繋がって、注文や利用がされるサービスは代表例です。今回は、そのOMOを店舗に応用している事例を見ていきます。

動画メディア企業が立ち上げたライフスタイルショップ【一条】

動画メディアを運営する一条。建築、人物、旅など様々な分野でライフスタイル提案中心の動画を毎日配信している企業です。

[一条] YouTubeチャンネル

一方で、ECサイトも充実していて、セレクトされたこだわりの商品を、商品のイメージ動画とともに提供しています。

今回は、上海に3店舗展開されている、一条が提供するオフライン店舗のひとつを訪れました。一条が提供する世界観に憧れる上海の若者たちが、ゆったりとショッピングを楽しめる居心地の良い空間が演出されています。

何も知らずに訪れれば、日本にもあるおしゃれな雑貨屋と大きく変わらないかも知れませんが、一条のメディアが提供する世界観や、オンラインオフライン問わず買い物できる環境。このようなOMO戦略が多くの中国の若者を惹きつけている理由です。

セレクトされた商品が並べられていて、日本製品も多い。日常生活に便利で、かつおしゃれな雑貨が豊富に取り揃えられています
ほとんどすべての商品のプライスタグに、QRコードがついていて、商品情報を閲覧することが可能
QRコードからECサイトページに。オンライン注文して自宅で受け取ることもできるし、その場で購入もできる。オンライン・オフライン問わない、OMOな買い物体験。
入り口付近にはカフェも併設。ゆったりできるワークスペースもあって、多くの人がPCをひろげて時間を過ごしていました。

インテリア業界で成長を続ける中国ユニコーン企業【造作】

各国のデザイナーによるスタイリッシュな家具を販売するインテリアショップの「造作(zaozuo)」。ECサイトも充実していますが、ショールームかつブランド発信地としてのリアル店舗も展開しています。

家具はやはりネットでは購入しずらいもの。ショールーム的な空間で、商品の使い心地を体験できるオフライン店舗を構え、購入はもちろんその場でも可能ですが、ネット販売サービスも充実。リアルにいながら、オンラインに常時接続するOMOを着実に実践しています。

ショールームのような店内には、スタイリッシュな家具が並べられていますが、こちらの店舗はそこまで種類は多くはない。店員さんも2人くらいで省人化されています
ほとんどの商品タグにQRコードがついていて、商品情報や活用法、デザイナーインタビューなどを見ることができます。店員さんに聞かなくても、多くの情報を得られて便利。
有名デザイナーによるプロデュース商品が並ぶ。店内でフューチャーされていたのは、中国で活躍する日本人建築家青山周平氏。

スターバックスと並ぶ中国コーヒーチェーン【luckin coffee(ラッキンコーヒー)】

創業2年で上場を果たした、今中国で一番勢いのあるコーヒーチェーン luckin cofee(ラッキンコーヒー)。店舗数ではスターバックスの約3500店舗に追いつく勢いで、出店を加速しています。

人気の理由は、ネットによる事前注文やデリバリーをしてくれることもそうですが、何より2杯買うと1杯安くなるなどクーポン利用により、手頃な価格でコーヒーを楽しめること。スタバに徹底して対抗した攻める戦略が成長を促しています。

店舗空間にこだわるスターバックス。一方で、OMO体験と手頃な価格によるコーヒー提供や利便性を売りにするluckin coffee。今後どちらに軍配があがるのか目が離せません。

店舗規模は様々ですが、中小規模の店舗がほとんど。店員は2名前後で、店内も比較的狭く、中にはカウンターだけの店舗もあります。
注文はすべて専用アプリから。今回は店内で注文しましたが、ほとんどの方は来店前に注文していました。
店舗に入ったら、コーヒーが用意されています。
あとはキャッシュレス決済で終了。

ネットショップなどデジタルへの投資によって、参入が容易になった小売業界。しかし、逆にEC市場が競争激化となった今の中国においては、リアル店舗への戦略によるブランディングが、他社との差別化要因となっています。オンラインやオフラインという意識すらない中国上海の人々の消費行動は、日本の今後の行く末を予見するようです。