魅力的なオフィスへの取り組みは、そこで働く社員のためであることは言うまでもありません。しかし、オフィス改装の効果はこれから働きたいと考えている採用希望者にも大きな効果を生みます。
オフィスのリノベーションによって、応募数が8倍も増加した株式会社オーツー様を例に、”魅(み)せる”オフィスのつくり方を、スペースごとに切り取りながら見ていきたいと思います。
歴史を物語るインダストリアルなショールーム
家具ブランド「QUON(クオン)」を製造・販売する株式会社オーツー様。
今回のオフィスデザインのテーマは、「無骨さ」と「男らしさ」が魅力のインダストリアルな空間。インダストリアルデザインとは、機能性に加え、金属や木材といった素材を上手に組み合わせる、工業的なデザインのことです。
元々は鉄工所から始まって販売へと進化した歴史があり、その流れからショールームのテーマを”インダストリアル”にしました。
天井下地は倉庫当時の状態を活かしながら、中央のエレベータースペースは屋上へと導く螺旋階段を新たに設置しました。螺旋階段からは自然光が降り注ぎ、空間を柔らかく照らす効果と、中心から広がるイメージを表現しています。
空間にはグリーンをアクセントに加え、柔らかさを演出。
快適さと集中力を高めるナチュラルなオフィス
ナチュラルな雰囲気にはリラックス効果があり、眼精疲労に良いと言われています。打合せスペースは集中力を高める効果がある”木目”を多く使用。
グリーンアメニティは、手に届く近い場所のものには生花を、遠く離れた場所のものには造花をセレクトし、本物に錯覚させる心理効果を取り入れています。
新作からオリジナルまで並ぶアートなカフェテリア
空間中央には、会話が弾む丸テーブルを中心に、社員の憩いの場をデザイン。
新作からオリジナル商品までが揃った空間では、使用用途を限定しないで色々なコミュニティが生まれる多目的スペースとして活用頂いています。
寛ぎ体感できる屋上ガーデン
屋外展示スペースでは、実際の屋外環境で商品を体感することができます。
パラソルと観葉植物が雰囲気を盛り立て、夕方から夜にかけては、ライティング効果によるムードのある空間を演出。
採光を意識した開放的なエントランス
エントランスは、より空間を広く見せ、明るい印象を与えるためのデザインにこだわりました。
風除室の壁はガラス面を増やし、限られた階段室スペースには鉄骨のササラを使ったシャープな階段で開放感を出しています。
その他の演出効果として、階段室奥壁に前面ブラックミラーを配置して空間の広がりを演出したり、エレベーターホールには吹抜け空間を設け圧迫感を軽減しています。
エントランスから続くマテリアルは、オフィス&ショールームのイメージを連想させたい想いと、統一感を図る目的で同素材を使用しています。
“魅せる”オフィスが叶える、企業のブランディング戦略
株式会社オーツーの梶原社長はリフォーム産業新聞のインタビューで、「オフィス空間を変えるだけで、採用の結果まで変わってくるんです!」と語っています。実際、2018年の新卒者向けの会社説明会で自社オフィスを披露したところ、従来までは100人中5人しか面接に来なかったのが、100人中40人に増加したそうです。
引用元:リフォーム産業新聞 1322号(2018年7月30日発行)
オーツー×パールマネキン、本社にオフィス改装のショールームをオープン
https://www.reform-online.jp/news/manufacturer/14146.php
オーツー様は鉄工所というオリジンを残しつつ、QUONブランドの世界観を存分に表現できるショールームや、デザイナーが新しい発想を生み出せるオフィス。また、社員同士のコミュニケーションを促すカフェテリアなど、”魅せるオフィス”のための様々な仕掛けを盛り込んでいます。
単に効率的なオフィスをつくるのではなく、企業カルチャーが表現され、社風の育まれる空間を作り出すことが、企業のブランドイメージの向上につながります。企業になかなか人が集まらない”売り手市場”の中では、競合他社との差別化と、企業の魅力をしっかりと伝えることが肝。まずは自分たちのコンセプトや世界観をきちんと伝えられているかチェックしてみると、新たな気づきや改善点が見つかるかもしれません。
スペースデザイナー。店舗、什器、展示会、オフィスと空間設計は多岐に渡る。週末には仲間とのサーフィンでリフレッシュをしています。