VMDという言葉をご存知ですか? アパレルショップでアルバイトをしたり、服飾やディスプレイの仕事に興味のある方は、よく聞く言葉ではないでしょうか?
VMDという言葉の使われ方として、一般的なのは下記の2つです。
- ビジュアル・マーチャンダイジング(visual merchandising)の略で、商品の魅力を視覚的に訴えかける事でお客様の購買意欲を喚起させるマーケティングの手法。
- ビジュアル・マーチャンダイザー(visual merchandiser)の略で、店舗の内装やディスプレイ全般を主に管理する職種。
※上記は英語圏では「VM」と略されていますが、日本では「VMD」が用いられています。
どちらも最終的に目指すところは共通していて、「見やすく、選びやすく、買いやすい売り場作りをすること」です。
日常生活の中で、お買い物をしているときを想像してください。ついつい足を運んでしまう、そして何度もそこで買ってしまう。いつ訪れてもお客さんでいっぱい。そんなお店はありませんか?そんなお店はきっと、より商品を魅力的に見せるプロの力=VMDを巧みに使っているはずです。
今回の記事では
① VMDとディスプレイの違い
② VMDとは「シンプル&クリーン」
③ VMDを生かした売り場作り3つのポイント
④ VMD応用編:ショップサイエンスとは?
この4つについて解説していきます!
VMDとディスプレイの違い
よく「VMD」は「ディスプレイ」と同義のものと勘違いされている方も多いのが事実。しかし上記でも記した通り、VMDは「お客様が商品を見やすく、選びやすく、買いやすい売り場作りをすること」。
一方ディスプレイは「商品をより魅力的に魅せるために空間を装飾・陳列すること」です。 要するに、VMDの概念に基づいたマーケティングをする中で、目的に合ったディスプレイをする。そう、ディスプレイはVMDの手法の内の一部だといえます。
VMDで一番重要なことはシンプルかつクリーン
VMDとはビジュアル・マーチャンダイジングの略で、お客様が商品を見やすく買いやすい売り場作りをすることです。もちろん専門的な知識は必要ですが、もっとも重要なキーワードは“シンプルかつクリーン”であることです。
重要なポイントは5つ。
- 解りやすく伝えているか
- 作業効率が良いか
- 誰にでもできるか
- センスがあるか
- 売り場がきれいか
しかし、これを売り場でどのように表現するかは、そのお店で売っている商品や店舗業態(ディスカウントとか百貨店とか専門店等)等のお店のブランディングで大きく変化します。例えば安さを売りにしているディスカウント形式のお店と、ハイブランドのファッション店では間逆な展開となります。
でも共通しているのは、先に書いた5つのポイントです。どんなに忙しくてもお客様にシンプルに商品価値を伝える意識と、常に売り場をきれいに保つ努力が大切です。
VMDを生かした売り場作り3つのポイント
お客様が「見やすく・買いやすく・触りやすい」売り場を作るためには、人の習性や行動特性等の簡単な知識が必要になりますが、それらに共通することはお店の業態や規模・取扱商品に関係なく、どこに陳列したりディスプレイするか?ということです。
VMD技術の中では、以下の3つに分類されています。
- VP (ビジュアル・プレゼンテーション)
- PP (ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション)
- IP (アイテム・プレゼンテーション)
上記3つの分類それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
【 VP(ビジュアル・プレゼンテーション) 】
お店のコンセプトや商品・ブランドイメージを伝えるテクニックのことで、お店の入り口ゾーンを使います。つまりお店の顔のことです。
ファッションやライフスタイルのトータルコーディネートを行い、お客様に一瞬でブランドの世界観を伝える役割を担います。特に共通通路に面しているお店のファサード(入り口)部分は他店との差別化も含めて、多くのお店の中から入りたいと思っていただいたり、再来店してもらうために最も重要です。
マネキンや商品を飾って、ブランドの世界観を表現するショーウィンドーは、特にプロがこだわりを持って演出する場所です。
【PP(ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション) 】
おすすめ商品や人気の商品をアピールするテクニックのことで、コーナーの角やテーブル上部、通路の突き当たりや壁面や柱の上部などを使います。
前者はお客様が店内を歩いているときに興味を持って立ち止まらせる役割、後者はお客様が遠くからでも見えて、店内の奥に入っていただく役割を担います。
それぞれの商品特徴を一番伝えやすくする手法であれば単品訴求・コーディネート訴求等々決まりはありません。
【IP(アイテム・プレゼンテーション) 】
商品を分かりやすく選びやすくする陳列テクニックです。デザインバリエーション・カラーバリエーション・サイズバリエーション・テイスト・TPO(時と所と場合)等、商品を選びやすいように手に取りやすい場所に置く、似ている商品や同じシーンで使う商品は近くに置く、色やサイズなどはお店ごとに規則を持たせるなど、お客様の立場でレイアウトも含めて考える必要があります。
例えば、ベーシックな洋服の色違いであれば、よりカラーバリエーションが見やすいように陳列する。逆に、特徴的な洋服の場合は、商品の個性が際立つようにあまり多くを見せずに陳列するなどです。
このような商品の陳列方法は、一見細かいテクニカルな話のようですが、お客様が手に取ってくれるかどうかにとても影響しますので、大変重要な要素です。
VMD応用編:ショップサイエンスとは?
では”売れる”お店をつくるためにはどうすればよいのでしょう?
お客様は商品を買うときには自分で見て、触って、感じて確かめたいと思っています。従って、売り場では商品やサービスをお客様が認知(発見)できて、できるだけ接触させる工夫が必要になります。その為に、認知(発見)させる機会は多ければ多いほど良いということになるのです。
売り場でお客様に商品を認知(発見)させる為には、人間の行動心理や、行動する際のクセを理解して売り場に仕掛けをしているのです。これを『ショップサイエンス』と呼んでいる方もいるようです。ショップサイエンスのポイントは以下の記事にて詳しくご紹介します。
VMDの基本”3つのP”で購入を後押し
普段何気なく入っているお店も、VP、PP、IPの3つのPによって作られているはずです。自身が買い物をしたときのことを振り返ると、3つのPに影響を受けていることがわかり、面白いですよ!
より詳しいVMDを活用したお店づくりのヒントをご紹介したこちらの記事も合わせて参照してみてください。
クリエイティブディレクター 兼 開発マネージャー。企画/デザイン部門を統括。ライフワークバランスを大切にし、週末には磯釣りをすることで心身共にリセットしています。